
https://ameblo.jp/ibiki-hakase/entry-11078590929.html
13世紀に創建|地元に根づいたお寺
鶯谷駅から徒歩圏内にある神社・寺のなかでも非常に歴史があるものとして永稱寺の名前が良く挙がります。
このお寺はなんと13世紀の建立とも言われており、根岸や鶯谷エリアのような神社・寺が多くあって時代を感じる町にあってもなおひときわ異彩を放つほどの古さです。
この永稱寺は浄土真宗の中でも西と言われる本願寺派で、やや華美な装飾を特徴とする宗派であり仏壇や仏具などにもそれがあらわれています。
その傾向はお寺自体にも及んでおり、永稱寺は入っていくとまず入り口の山門の立派さに圧倒されるでしょう。
台東区の重要文化財にも指定されている建物や、木彫りの装飾・仏具、施設など数々の貴重なものが存在する永稱寺は鶯谷・根岸付近でもとくに抜きんでた文化スポットと言えそうです。
鎌倉時代に端を発するだけあって住職も現在は25代目であり、ずっと同じ鶯谷から近くの場所でお寺を構えています。
まさに地元に数百年もの間親しまれている、地元に根付いたお寺であると永稱寺に関しては言えるでしょう。
ちなみに永稱寺は永称寺(えいしょうじ)とも表記され、長久山と号しています。
開いたのは僧侶の浄念(俗称は和久勝之進で、没年は宝治2年)と言われておりそのころから周囲の土地に住む人々の信仰の対象となっていたようです。
絵画や巻物、鐘楼など芸術性の高い所蔵品も多いためそれが目当てで訪れる人がいるほどに、長い歴史を芸術品に凝縮して現代に存在する非常に珍しいお寺であると言えるでしょう。
神社・寺を愛する愛好家たちの間でも人気であり、鶯谷近辺で寺めぐりをする際には必ず候補に入ってくる名刹でもあります。
名のある画家三人が描いた三幅対の松竹梅
永稱寺には数多くの貴重な文化財があり、台東区のほうで重要文化財指定されているものがいくつもあるほどです。
その中でも有名なのが「松竹梅」をモチーフとした絵図であり、それぞれ三人の著名な画家に描かせてそれを組み合わせたものとして大変に珍しく美術品としての価値もあるものになります。
「歳寒三友図」というのがその正式名称で、三つで一組となる構図になっているものです。
これを「三幅対」と呼び、「松の図」は高名な谷文晁が描いています。
「梅の図」は酒井抱一、「竹の図」は大窪詩仏と当時のトップレベルの画人に描いてもらったもので、永稱寺にとっても大変に重要な存在です。
谷文晁は江戸時代の画家であり、現在は掛け軸などの美術品を扱う市場でビッグネームとして知られています。
根岸の生まれであり、このお寺とも縁があったと考える方が自然でしょう。
自然をありのままに描く写実的な画風は美術界で高く評価されており、数百年経った今でも見る人を動かすその力は作品に宿っています。
梅の図を書いた酒井も根岸周辺の出身であり、現在の根岸五丁目付近に住んでいたそうですから永稱寺の住職とも顔見知りであった可能性があるでしょう。
当時も今と変わらず、ご近所づきあいや人とのつながりを重視した社会であったことがよくわかるエピソードです。
この三幅対の松竹梅は普段は公開されておらず、湿気やカビなどから守るために厳重に所蔵されています。
美術館などに貸し出したりする機会もありますし、年に何度かある公開日にこの美術品を見ることが出来ますので永稱寺の発信する情報をしっかりとチェックしておきましょう。
門や柱に見事な木彫り彫刻
永稱寺の参道から中に入るときに誰もが感銘を受けるのが、その山門の壮麗さです。
大きいだけでなく立体的で印象深い木彫り彫刻が施されていますが、当時の技術の粋を集めた職人によるもので現在も修復にはたいへんな技術が必要なものになっています。
鶯谷近辺、現在の根岸のあたりは江戸やその以前から文化的にレベルの高い地域であり、芸術家や高いスキルを持った職人が多く住んでいたためにこのような高度な装飾を依頼できたのだという説もあり、先述した三幅対松竹梅などにも見られるように芸術家同士の交流など、面白い観点から見ることもできるのです。
とくに芸術家などが住むようになったのは江戸時代の中期以降で、徳川幕府がしっかりと地盤を固めて江戸の街を世界的な大都市に発展させて以後のことと言われています。
門柱などの木彫りは関東大震災、また第二次世界大戦の空襲で大きな被害を受けましたがその多くは無事であり、焼けてしまったものも戦後早くに修復がなされて現在の姿を取り戻しているという経緯があるのです。
根岸の地元住民にとってははるかな昔からあったお寺であり、その復旧が戦後からの復活につながるという意味合いもあったためその修復には大きな意味があったということになります。
すでに数百年を経ている永稱寺ですが、新しい時代を迎えても全く変わらないその姿に多くの人が郷愁を感じてその保存に動いているのでこれから先もずっと周囲の人々に安心を与える、そんな存在であり続けることでしょう。
鶯谷周辺に立ち寄ることがあれば、ぜひ永稱寺にも足を伸ばしてこの文化と歴史の香りに触れてみてはいかがでしょうか。